入社1年目の新人ちゃん、派遣社員の僕の独断で勝手に帰らせてみた!
そしたらなぜか
- 業績が伸びた
- 残業が減った
- 休暇が増えた
- みんなが協力して仕事するようになった
これまでの働き方を考えさせられる摩訶不思議なお話。
新入社員が残業しても無意味だと判断した理由
従業員100人規模の民間企業でのお話。
僕が配属された部署には1年目の子がいたんですが、そのおかげで入社してすぐに現場の違和感に気付きました。
先輩社員や管理職、別部署の同期がゾロゾロと列をなして定時で帰る中、新人ちゃんだけが休憩取れないほど激務だったんです。
10時と15時の小休憩は業務に追われすぎてトイレにすら行けない場合もあります。
1時間もある昼休憩ではおにぎりだけ食べて20分後には現場に入って書類を整理しています。
もちろん定時間内に1日分の仕事が終わるはずなく、みんなは彼女を置いてタイムカード置き場へ。
誰もいなくなった薄暗い現場、彼女のデスクの明かりだけが煌々と灯り続ける、そんな毎日。
(これは何かある)と思っていろいろリサーチしてみた結果、完全に無意味な残業であることが判明。
なぜ無意味だと気付いたか?判断基準は3つあります↓
管理職の仕事だった
新人ちゃんは、通常の生産業務+管理職がやるはずの書類整理を任されていました。
誰がどう見ても、1年目の新人は現場に入って品質やマシン操作など、理解を深めるフェーズのはず。
生産業務さえ真面目に取り組んでおけば文句は言われません。
でも、彼女の書類棚だけはなぜかいつも満杯。
で、書類の内容も、新人とは全く関係のない、総務課にしか分からないような内容。
「こう書くんだよって言われたから…」とりあえずやってあげている状態。
新人のスキルアップに一切無関係な仕事のために、新人ちゃんは毎日残業しているのでした。
この会社では管理職がやる仕事が極端に少なくて、いつも暇そう。
マウスに手をおいて(カチ…カチ………)5分経ったら背もたれに寄りかかりながら天井を見上げて…の繰り返し。
いつもそんなんなのに、忙しそうに残業している彼女に声がけしようとはせず。
「がんばり屋さん」という称号が付けられていました。
残業→習慣に変化していた
今日の残業に意味があるかないか?の部分を誰も追求しませんでした。
残業している=何かやることがあるんだろう、という妄想で片付ける。
残業申請という概念もなかったので、残るデータはタイムカードの時刻のみ。
とある金曜日、新人ちゃんのタイムカードをチラッと見てみました。
7:45 18:28
7:40 19:02
7:42 18:58
7:35 19:35
7:52 18:56
じゃあ、管理職のタイムカードは?
7:52 17:05
7:48 17:01
7:45 17:01
7:50 17:03
7:55 17:01
お前がやるべき仕事だぞ?
とんでもねぇな…
残業の理由を本人も周りも知らなかった
試しにある社員に、新人ちゃんの残業内容を知っているかどうか聞いてみました。
「ん~復習でもしてんじゃない?新人だし」驚きの返答。
ってかその認識なら業務外の作業に給料払ってんのかよ!ってなりますよね?
どうして”自分の頭で考える”というリソースを割かないのだろう…
思考停止体制って恐ろしい。
「私帰っていいんですか…?」新人を定時で帰らせてみた
ということで、僕は1つ”嘘”をついて新人ちゃんを強制送還することにしましたw
「今日は残業ないらしい、ほらみんなデカイ荷物持って帰ってるよ!」
集団心理を利用して言葉に信憑性を乗せつつ、新人ちゃんの心を揺さぶります。
(ちなみにデカい荷物=家で洗うための作業着。金曜日なので当たり前w)
「えっなんで?金曜日なのに…私帰っていいんですか…?」
「早く支度しないと鍵閉められちゃうよ」
「!?」ガタガタ
僕の独断だとも知らず、急いでロッカーに飛び込む新人ちゃんw
1分しないうちに、作業着の上から上着を羽織っただけで飛び出してきました。
「「「さぁ!!!行きましょう!!!」」」
僕がびっくりしたのは、彼女が無邪気に飛び跳ねながら聞いたことない声量で叫んだのもそうなのですが。
笑顔です。
思えば、彼女が現場で笑っているところを見たことがありません。
いや、正確にはあるんですけど、それは疲労にまみれた愛想笑いです。
仕事を押し付けてくる上司とのコミュニケーションの疲れ。
別部署の同期と労働環境が違いすぎるフラストレーション。
1年目で追い詰められすぎて、労働が嫌いになっていたからでしょう。
じゃあ、帰らせたことで何が起きたのか?という一番気になる部分。
結論↓
何も起こらなかった
特に何も起こりませんでした。
いや、良いことは起こりました。
月曜日に出社してきた新人ちゃんが自分の書類棚を見てびっくり。
「仕事が…ない…」
いつも満杯だったはずのケースが空っぽなのです。
じゃあ書類はどこに行ったのかというと、本来やるべき人たちがすべて持っていきました。
「なんだぁ~書いてないじゃん」スラスラスラ~で、終わり。
1日10枚以上ひとりでやれば間に合いませんが、1枚ずつ10人でやれば一瞬です。
新人ちゃん、口ポカン。
「な?帰っても別に平気でしょ?」
「………山吹さん嘘つきましたね!?www」
「否、これは悩める民の救済である(キリッ」
会社が残業体制を改めた
今回のことがあって、理由を付けて残業申請する形式に変更されました。
それも書面上の理由ではなく
- いつ
- どこで
- 何を
- なぜ
- どれくらい
- どうするのか?
きちんとヒアリングしてから、上司から残業許可が下りる、という仕組みに変わりました。
残業代って経費なので、むやみに残業されると不利益である、ということに会社が気付いたんですね。
休暇まで増えてしまった
「そんなに残業いらなくね?」となってから、そもそもの休暇日数が増えました。
例えば、誰もがゆっくり過ごしたい年末年始休暇。
以前までは長期休暇の間で代わりばんこにちょくちょく出勤して、けっきょく月間労働日数20日で~すみたいな。
落ち着いて休めないし損した気分になって嫌だったんですが、12月末の土日~1月2週目の土日まできっちり休めるように。
会社全体で労働日数が減ったのに業績が維持できる異常事態が発生。
みんなが協力して仕事しはじめた
それもこれも、”各自やるべきことを自分でやる”が徹底されたおかげです。
- どうでもいい仕事だからといって他人に押し付けない
- 分からない部分があるというだけで投げないで、聞いて自分がやる
- できない・知らない仕事があればできる人から教育・認定を受ける
理想の体制が整いました。
…いや当たり前のことなんだけどさw
むしろ業績が伸びた
で、労働効率が上がるので一人ひとりの相対的持ち時間が増え、業績が上がりました。
「俺これできるからあっち進めていいよ」という声がけが始まったんです。
効率化に次ぐ効率化。
全員の仕事が楽になったにも関わらず、体制変化後の最初の月、生産効率130%とかいってました。
今までの苦労はなんだったんじゃ…
組織は下から動かすもの
僕は転職しまくっていた時期があって、色んな会社に出向いたことがあります。
共通点を見付けたのですが、お偉いさんはエクセルの画面しか見えていないということ。
いちいち同じこと聞いてくるし、「それ昨日言ったよね!?」てことすらまったく覚えていません。
単純に使えない人間である可能性もありますが、多くの場合”現場とデスクは別物”という間違った認識によるものです。
現場があるからデスクで仕事が発生するし、デスクで仕事があるから現場も動く。
本来なら現場もデスクもシームレスに繋がるべき、同じ会社内での出来事なんですよね。
働く中で自分に不利益があるなら、積極的にデータを残してあげて認識させるべきです。
「まだ終わってないよ、どう立ち回んの?」
「これ誰もできないよ、どう解決すんの?」
「この仕組みおかしいよ、どう変えんの?」
↑これは上司が部下にプレッシャーを与えてサボるためのセリフじゃなく、若手が組織を鼓舞するために使うべき言葉です。
受動的な働き方は、この資本主義社会では搾取対象。
自分で考える・自分で動く、つまり”能動性”が、資本主義において資本です。
「下っ端だから苦労して当然」とかいう意味不明な古ぼけた価値観にならっても無意味。
無意味な苦労を我慢しても、給料は上がらないし、休みは増えないし、出世もできません。
長いものに巻かれるって考えを捨てないと、デスマーチから一生抜け出せない可能性が非常に高いです。
PS.
ていうかね、思うんですよ。
「金曜日なのに仕事詰めなくていいの?」
「私って本当に帰っていいの?」
未来ある若手にこんな悲しいセリフを吐かせるな。
てめーの背中で理想の大人像とか素敵な未来とか見せてやれよ。
と、思いました まる